概要
EarthCARE 衛星は、雲・エアロゾル・放射ミッションで、次世代型アクティブセンサである、ドップラー機能を持つ94GHz雲プロファイリングレーダ(CPR)、高分解能ライダ(ATLID)と、多波長イメージャ(MSI)、広帯域放射収支計(BBR)の合計4種類の観測機器を搭載する予定である。
これらのセンサーを複合利用することで、雲、エアロゾル、それらの放射特性について、これまでにない詳細な情報を得ることができる。
当研究グループではEarthCARE衛星の解析に利用するアルゴリズムの開発を実施している。
大気物理研究室の岡本はこのミッションの日欧共同議長を務め、また宇宙航空研究開発機構(JAXA)のプロジェクトサイエンティストとして、衛星計画全体のとりまとめを行っている。また、JAXAのResearch Anaouncement (RA)として、CPR,CPR-ATLID, CPR-ATLID-MSIのアルゴリズム開発を実施している。
JAXAのResearch Announcement (RA):メンバー
PI | 岡本 創 (九州大学応用力学研究所) |
---|---|
Co-I | 佐藤可織 (九州大学応用力学研究所) 及川栄治 (九州大学応用力学研究所) 石元裕史 (気象研究所) |
研究課題
これは、CPR単独で、もしくはCPRとATLIDの2つのセンサや、CPR, ATLID, MSIの3種類のセンサを複合利用することで、雲と降水についてその微物理特性を詳細に求めるアルゴリズムを開発するものである。開発されたアルゴリズムは、衛星打ち上げ後には実際にプロダクトを出すために用いられる予定である。
2016年に打ち上げ予定のEarthCARE衛星にはCloudSat衛星にはなかったドップラー機能を持つ雲レーダCPRが搭載される。これによって、雲の内部における対流等による上下運動の検出が可能となる。また大気の運動が無視できる場合には粒子の落下速度を求めることが可能になると期待される。EarthCAREにはまた、高分解能ライダATLIDが搭載される。CALIPSOでは直接観測することができなかった消散係数を、ATLIDの高分解能機能から求めることができるのが大きな特徴である。
図2にはCloudSatとCALIPSO衛星のデータから推定されたEarthCARE衛星の雲レーダで観測されるドップラー速度の時間高度断面を示している。上層の雲域では小さい速度だが、下層の降水領域では、ドップラー速度が4m/sを超えているところが散見される。この新しい観測要素を解析アルゴリズムで利用することで、雲の微物理特性や降水・降雪フラックスを、より精度よく求めることが可能になると期待される。